”MUSIC COLLAGE"
各曲の解説と聴き所
1. Multiplication
増殖という意味ですが、衝撃音と同時に様々なシークエンスフレーズが徐々に増え複雑に絡み合います。そこに尺八のメロディが被さり、第二楽章の世界観が展開し、再度シーケンスフレーズが増殖し、衝撃音で全てから解放される...そういうイメージです。
<聴き所>
尺八はYAMAHAのVL1で、ブレスコントローラーで抑揚を制御しています。効果音はYAMAHAのMONTAGEとSpectrasonicsのOmnisphere。
2. Ecstasy Of Love
静寂の中からJazzyでAcidなエレピ(ウーリッツァ)が奏でられ、エレクトロビートがスタートし、分厚いシンセサウンドが飛び交います。中間部でのエスニックリズムとテクノビートとの融合と次々に倍音が変化していくシンセパッドが恍惚感を表しています。
<聴き所>
Steinberg GrooveAgentとIK Multimedia SampleTankによるエレクトロビートとエスニックビートの融合がポイントです。縦横無尽に飛び交うシークエンスやアルペジエイターはSpectrasonic OmnisphereとArturia Mini Vです。
3. Heartfelt Thanks
アコースティックピアノをフィーチャーしたスムースジャズです。サビのラテンボイスのメロディー後にベースソロ、そして軽快なラテンビート上で熱いシンセソロを64小節弾きまくっています。Heartfelt Thanks とは「心からの感謝」という意味で、私の音楽人生で出会った多くの方、素晴らしい経験への感謝を表現しています。
<聴き所>
UVI GrandPiano Model DとYAMAHA MONTAGEのエレピの音の良さに触発されて出来た曲で、サビのラテンボイスもMONTAGEです。ベースには最もお気に入りのIK Multimedia MODO BASSを使用。弦がフレット当たる感じや弾きかたの振舞いなど、本物のエレキベースにしか聴こえないと思います。ドラムスはJohn "JR" Robinsonをイメージして打ち込みました。
4. Spiral Decision
インダストリアルなサウンドエフェクト上でのJazzyなアコースティックピアノソロで幕が開き、エスニックなシーケンスと共に斬新なエレクトリックジャズがファンキーかつスリリングに展開します。モダンジャズのようでダンサブルでもあり、アルバムの中でも異色のナンバーです。
<聴き所>
Steinberg Dark Planetの効果音がこの曲のインスピレーションを広げてくれました。今風の少し歪感のあるローズピアノはArturia Stage-73Vで作り込みました。スティービーワンダーを意識したArturia ClavinetVによるクラビネットのグルーヴ感は一聴の価値あり!
5. City Lights
LAから東京への帰国便で、夜に羽田空港に近づいた時の宝石箱のように煌びやかな東京の夜景を見て出来た曲です。LAのSmooth JazzのFM局で流れているようなイメージで作曲しました。
<聴き所>
YAMAHA MONTAGEのナイロンギターの表現力に惚れ込み、メインメロディを奏でています。TOONTRACK EZdrummerによる軽快でグルーヴィーなドラムスと、IK Multimedia MODO BASSのエレキベースのコンビネーションにはかなり懲りました。MODARTT PIANOTEQによるアコースティックピアノのリズムバッキングは、私的には一番のオススメ聴き所で、大好きなリチャード・ティーをイメージして弾いています。
6. Funk Up The Pump
トランペットとテナーサックスの2管によるシンプルなメロディーやソロが縦横無尽に絡む、直球ど真ん中のファンクナンバーです。タイトルに意味はなく、語呂の良さで選びました。
<聴き所>
ワウギターに聴こえるサウンドは、Spectrasonic KEYSCAPEのクラビネットにディストーションとオートワウをかけて作り込んだ入魂のサウンドです。テナーサックスはYAMAHA VL1。物理モデルならではのリアルさで、実際にブレスコントローラーで制御しています。Spectrasonic KEYSCAPEによるCP70は大好きなジョージ・デュークをイメージして演奏しています。もちろんシンセベースは愛機MOOG minimoog。実は通常のベースの音域にプラスして、1オクターブ下をユニゾンしています。重低音はコイツならでは。
7. Asian Deep Forest
YESの”危機”のイントロみたいな効果音から始まるプログレ風な曲を作ろうと思ったが、富士山の清流の音とマレーシアの密林のノイズが、別方向の音楽的インスピレーションを呼び覚まし、私が今まで訪問したアジア諸国(中国、香港、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール)を訪れた時のイメージを膨らまし完成した曲です。
<聴き所>
様々な効果音、環境音、エスニック楽器群はIK Multimedia SampleTankが大活躍しました。ゴングのシークエンスにマッチしたドラムループはSteinberg LoopMash。コーラスはSteinberg Padshop。後半に登場する重厚なシンセパッドは、愛機Sequential Circuits PROPHET-5です。
8. Mystic Moon ”朧月夜”
唱歌”朧月夜”をMystic Moonと解釈し、自然だけど透明感のあるコード進行とミステリアスな月のイメージで彩ったシンセサイザーサウンドでアレンジしました。神秘的な世界観の効果音の中でかぐや姫が月に帰って行くような上昇音や、トミタサウンドを徹底的に研究し尽くして作ったシンセパッド、シンセクワイアを、アコピとエレピのレイヤーサウンドに混ぜています。
<聴き所>
冨田勲作品である源氏物語幻想交響絵巻、イーハトーヴ交響曲やドクターコッペリウスの公演の際に作り込んだシンセパッド、シンセクワイアは、実際に冨田先生にお墨付きを頂き、そのサウンドをYAMAHA MONTAGE、Spectrasonic Omnisphereで完全再現しました。ピアノはYAMAHA MONTAGEのCFXグランドピアノです。唯一のヴォーカル曲で、BaBy★Kyの楽器的な唄声が程よくマッチングしました。
9. K's Shuffle
大好きなヤン・ハマーとジェフ・ベックのバトルをイメージしてプロデュースしました。ヤン・ハマー的なシンセリードフレーズは極限まで極めているので難なくできるのですが、ジェフ・ベック的ギターはゲストギタリストに頼もうかとも思ったのですが、鍵盤で弾いてみてもいい感じになったので、このアルバムのコンセプトでもある「全ての楽器を私がプログラム&演奏する」ことに徹しました。
<聴き所>
Spectrasonic Omnisphereによるシーケンスからスタートし、3連シャッフルビートが絡むギミックがポイント。愛機minimoogで弾きまくったシンセリードとシンセベースは極めたかなぁ..と。中盤のヤマハMONTAGEのハードロックオルガンもジョン・ロードっぽくキメました。
10. One Day Of Deep Fall
紅葉に深く染まった古都で、穏やかでゆったりとした時間の流れの中に居るイメージから膨らんだ曲です。A,B構成のメロディがまず浮かび、そこに様々な秋のエッセンスを絵の具に見立てて、様々な色彩を散りばめました。当初はアコースティックピアノ中心でアレンジしていましたが、哀愁のあるオーボエのような木管楽器がメインとなりました。
<聴き所>
何と言ってもヤマハVL1(物理モデルシンセサイザー)による木管楽器の音色に懲りました。物理モデルというのはリードとパイプを仮想的に構築しリードの振動が菅を伝わって発音する仕組みで、この曲ではオーボエのダブルリードにソプラノサックスの菅(真鍮製)を持っていて、ブレスコントローラーで息の強さでダイナミクス(リードの震え具合)を制御しています。アコースティックピアノとエレクトリックピアノはSpectrasonic KEYSCAPE、Steinberg HALion SonicによるTR808系のリズムもYAMAHA MONTAGEのウッドベースとよくマッチングしています。
11. Tokyo 2030
2030年の東京の情景を音で表現した曲です。その頃には東京は混沌としているのか?それとも豊かで過ごしやすい都市になっているのか?荒廃してしまっているのか?皆さんはこのサウンドを聴いてどう感じるでしょうか?
<聴き所>
Spectrasonic Omnisphereによるサウンドエフェクト、Steinberg Padshop Proによるグラニュラーシンセによる世界観でアコースティックギターが演奏されていますが、これはROLI Seaboardによってコントロールされており、時折聴ける滑らかで浮遊感のある不思議な音程変化が特徴です。後半に現れる重厚なシンセパッドは愛機Sequential Circuits PROPHET-5です。
12. Ecstasy Of Love - Extended MIX
2曲めのEcstasy Of Loveのリミックス・バージョンです。素材的には全く同じものを使用し、幾つかの新音色によるフレーズも付加されています。ミックスは、よりダンスビートを強調し特に超低域はかなり密度の高い方向性に振っています。
<聴き所>
Steinberg GrooveAgentのエレクトロビートとIK Multimedia SampleTankによるエスニックビートの融合には、かなり懲りました。Arturia Mini Vによる極太のシンセベース、Arturia DX7Vによる中間部のダンスビートとアルペジエイターフレーズも要チェックです。